城とオキナグサと草スキーの草原
草原の概要
基山は脊振山地の東端にあたり、佐賀県三養基郡基山町と福岡県筑紫野市にまたがる標高404.5mの山である。国の特別史跡基肄城跡は、飛鳥時代(665年)に大宰府防衛の拠点の一つとして山の東側側面に築造された朝鮮式山城である。建築物の礎石や水門などが残り、寄り添うように草原が存在する。眺望に優れ、史跡めぐりコースが整備され、九州自然歩道の経由地にもなっており、多くの人が散策に訪れる。山の西側側面にはなだらかな傾斜地に沿う形で草原が広がり、約100 年前から盛んに行なわれている草スキー場がある。天然芝を痛めないよう木製スキーの貸し出しが行なわれており、休日は家族連れで賑わう。オキナグサなどの希少植物が生育する草原は数年前から注目されはじめた。山頂部にはオキナグサが群生し、開花時期は花を目的に訪れる方も多い。
このように、「基肄城跡の草原」、「草スキーの草原」、「オキナグサの草原」の三つ顔を持つのが「基山の草原」である。
今後の展望
全体としては良い方向にいっていると考えているが、基山草原のあらゆる場所に生育するオキナグサ等の希少植物の保護と、特別史跡や草スキーの利用とのバランスを取るため、希少植物の保護エリアを設け保護活動を行っている。一方で、希少植物愛好家による無許可の柵の設置や登山者による焚火やゴミの散乱などの問題があり、今後、看板等によるルールの周知に取り組んでいくこととしている。
「キザンの魅力」シンポジウムには、多くの基山を愛する町民が集まり活発な意見交換が行われた。行政は、駐車場や基山内の管理棟、東屋、案内板等のハード整備をするとともに、町民をはじめとした関係団体や周辺自治体と力を合わせ、基山の一大草原を目指して、取り組みを進めて行くこととなった。
基山の草原の旬は、ゴールデンウィーク及びその前後の3月末〜5月末である。2024年以降は、「未来に残したい基山の草原」として、全面的にPRしていきたい。また、将来的には、三つの草原だけでなく、山全体を草原化して、「基山の草原」という呼び名を、どこにでも通じる固有名詞にしていきたい。そこには、自然、歴史、文化、環境、観光のすべての要素が詰まった一大草原の完成があると考える。そのためには草原の成り立ちや利用の歴史などを掘り起こし、基山草原の特徴と価値をさらに磨き上げる必要がある。
応募した理由
が誇るには三つの草原が広がっている。国の特別史跡城跡では遊歩道を利用した散策が、草スキー場では観光資源としての草スキーが楽しまれている。これまでは、誕生の由来や活用方法の違いにより、それぞれ独立した形で認知されてきたが、基山山頂に生育するオキナグサ等の希少植物にスポットライトがあたった。選定を契機に、より多くの人に、基山の草原を知ってもらうとともに、三つの草原の連携を図ることにより、異なる機能の草原を有する基山全体が一つの新しい草原として認知され、保全と活用が進むと考えた。
(応募者:オール基山の会)
選考委員のコメント
山城跡の草原を見たいし、草スキーもやってみたいです。観光、旅行客を引き付ける数々の工夫があるのだろうと想像します。茅の採取や採草などはどのように行っていたのだろうかなど、興味はつきません。
阿蘇くじゅうや霧ヶ峰などの広大な面積の草原だけでなく、草原生の希少な生き物は伝統的な山城跡や墓地、ため池土手などの小さな草原の中で守られていることも多いものです。地元の人々によって維持・管理されてきたこれらの草原は、文化財として歴史的な価値を持つ史跡でもあり、OECM の自然共生サイトにふさわしい場所でもあります。 研究機関などとも連携を深め,価値の掘り起こしが進むことを望みます。今回の「草原の里100 選」認定を契機に、このような小さな草原の価値が積極的に評価され、保全管理の継続に追い風となることを期待しています。
佐賀県唯一のオキナグサ自生地で、草原の里として大切な場所だと思います。ぜひ行ってみたいです!「子ども基山認定ガイド」等地域とかかわりが深い草原とのかかわりにも期待しています。
OECM の自然共生サイトとしても考えていってほしいです。
草原の情報
応募者 オール基山の会
所在地 佐賀県 基山町
所有者 基山町
管理者 基山町
面 積 6.48ha
指定等 県立自然公園、国指定特別史跡(基肄城跡)、日本の名城続100選
書籍のご紹介
より詳しい情報は、書籍『未来に残したい日本の草原(未来に残したい草原の里100選運営委員会 編)』をご覧下さい。