地域における草原と向き合い方は、地域から草原への働きかけと、草原からのフィードバックの繰り返しによって、経験的に紡がれてきたものです。
人と自然との、長年にわたるやり取りにより、地域に蓄積された知識・意識・技術こそが草原の里が持つ価値です。この価値あるものを「共創資産」と捉えました。日本各地の草原の里にはそれぞれに、限られた自然資源を保全し、持続的に活用していくための共創資産が残されているはずです。
各地に残る「共創資産」を日本全体で共有し、活用していくことで、次世代に希望のある自然共生型の社会をつくるために、以下に例として示したような観点から、段階的な審査を行います。
審査は有識者で構成する草原の里選考委員会が行います。
1 - 草原の自然
里の営みによって維持されている草原の自然について評価します。
[審査の観点]
- 人為的に伝統的管理がされてきた、在来草本を主体とする草原である。
- 草原の景観の特徴が説明できる。
- 草原に生息生育する特徴的な動植物が把握できる。 等
2 - 草原からのめぐみ
里の営みを通じて受け取っている、草原からの資源や恩恵について評価します。
[審査の観点]
- 現在及び過去の利用が説明できる。
- 今後の利用について方針が決められている。
- 草原の特徴を、現代的な意義も交えて説明できる。 等
3 - 草原を維持するしくみや、価値を享受するしくみの良さ
草原との関わり方が理解され、継続されるしくみになっているか、持続性、公共性の尺度から評価します。
[審査の観点]
- 管理手法が妥当である。
- 管理が継続される見込みがある。
- 土地所有者の了解が得られている。
- 草原が生み出す経済が、管理者に還元される仕組みがある。
- 動植物についてモニタリングが行われている。
- 管理主体が明らかである。
- 里の関係者、または里の関係者と連携した団体が管理主体である。
- 外部からのサポートの仕組みがある。
- 市町村の計画等に位置付けられている。
- 多様な主体(学校、企業、専門家、ボランティア等)が連携している。
- 社会的な活動と結びついている。
- 経済的な仕組みと結びついている。 等
4 - 共生型社会の実現に向けた波及効果(ロールモデルとしての期待)
草原の里が地域や地域外の社会に良い影響を及ぼしている効果。また、今後、影響を及ぼすことへの期待。
[審査の観点]
- 草原の生態系と、利用、管理、保全との相互作用が説明できる。
- 草原に関わる人自身が、草原の価値や生態系サービスを明確に認識しながら活動している。 等
5 - 草原に対する思いの強さ
草原に関わっている応募者や関係者の思いの強さ、熱量、行動力を評価します。
[審査の観点]
- 管理を継続する意志が明確である。
- 管理に関する方針や計画が定められている。
- 次世代の育成を行っている。
- 情報発信を継続している。 等
上記以外の観点で、普及すべき際立った特徴がある場合は考慮する。
委員長からのメッセージ
湯本 貴和
京都大学名誉教授
明治大正期には日本国土の13%程度を占めていた草原が、茅葺きやまぐさ秣の需要が激減したことなどから、現在では10分の1以下に減少しました。
草原が失われることは、草原にしか生きられない植物や昆虫が絶滅の危機に瀕するだけでなく、草原に関する地域の歴史や文化、人々の記憶や知恵、絆までが失われてしまうことを意味します。
「未来に残したい草原の里100選」は、それぞれの地域が草原を生かした地域づくりを競い合い、その輝かしい成果を顕彰する場とは考えていません。
共通の課題を抱える地域が互いの実践やアイデアを学び合い、共に未来へ進んでいくための仲間探しの場でありたいと思います。
みなさんが応募する段階で、誇るべき宝を再発見したり、足りないパーツを認識したりする作業そのものに大きな意味があると信じています。
第2回の募集になります。迷っているみなさん方も奮って「未来に残したい草原の里100選」にご応募いただき、わたしたちの仲間の輪に加わってくださることを願っています。