吉無田高原

心の渇きに吉無田高原

吉無田高原の全景

草原の概要

町の観光の中心でもある「吉無田高原」は、標高600〜700m の場所に位置しており、阿蘇南外輪山に広がる数少ない貴重な草原(ネザサ・ススキなど在来植物による草原)で、来訪者に魅力的な景観を提供するとともに、多くの草原生植物が生育している。

緑あふれる草原がつづく高原一帯は、春はワラビ狩り、夏は新緑、秋は紅葉、冬は霧氷と、四季の移ろいとともに変化する大自然が堪能できる。また、傾斜が比較的緩やかで、一般の来訪者が気軽にアクセスし、探索をすることができる。高原の頂部からは有明海や天草の島々、長崎県の普賢岳までも一望でき、高原の高低差を活かしたマウンテンバイク(MTB) コースや草スキー場も整備されている。

吉無田高原は市街地から遠く、夜間に人工の光が少ないために、星が降るような満天の夜空を観察でき、銀河の大パノラマを満喫することができる。

御船ジュラシックトレイル(トレイルラン大会)

今後の展望

草原の管理については、地域の高齢化が進んでおり、今後は地域住民と連携した維持管理ができなくなることが予想される。保全管理の仕組み作りと担い手育成が課題であるが、野焼きによる草原環境の存続への危機感は地元住民、行政ともに強く、草原の価値や文化を共有・継承していく必要性は共有されている。外部からの支援強化も視野に、草原環境の価値の伝承と多様な連携による草原管理を実現したいと願っている。

現在、吉無田高原を活かした様々なスポーツイベントを開催しており、今後も草原を活かしたイベントやプログラムを開発し、観光や福祉などと連携した幅広い観点から、草原の維持・活用と交流人口の増大を図っていきたい。

また、本町は「全国草原の里市町村連絡協議会」(草原地域の自治体の全国ネットワーク)にも参画して情報の収集に努めており、今回の「草原の里100選」の選定を起爆剤にしたいと大きな期待を寄せている。他の地域の取り組みにも学びながら、自らの草原の多様な価値を掘り起こして、地域内外を問わずそれらを共有し、新しい「里の仕組み」を創造していくべき草原として守り、活かし、次世代に継承していきたいと考えている。

熟練者による火付け作業

応募した理由

御船町における重要な観光資源であり、地域の宝でもある「吉無田高原」を後世に残し、また、吉無田高原の魅力を全国に発信するために応募した。今回の「草原の里100選」をぜひ起爆剤にしたいと期待を寄せている。

近年、野焼きなどの管理作業への地元の負担が大きく、草原の存続が危ぶまれている状況のなかで、今後草原環境の多様な価値を掘り起こしつつ、町民自らが維持保全に関わる仕組みを構築し、草原に誇りを持てる意識の醸成を図るために、今回の登録を糸口としたい。

(応募者:御船町)

シバ草原でローンスキーを楽しむ子供たち

選考委員のコメント

町田 怜子
町田 怜子

伝統的な野焼き管理を継承しつつ、草原とスポーツアクティビティをつないだ草原利用は、今後の草原でのアドベンチャーツーリズムの展開へと期待されます。加えて、御船町地域連携保全活動計画に基づき、協議会を中心に地域団体等と連携して「吉無田高原」を中心とした田代地区の生物多様性保全に向けた調査研究に取り組んでいる点も評価しました。

高橋 佳孝
高橋 佳孝

阿蘇の大草原に隠れた存在で知名度は低いですが、南外輪山の外側に広がる数少ない貴重な草原です。コンパクトな中にも来訪者には魅力的な雰囲気と景観を提供し、多種多様な草原生植物が人知れずに生育しています。農畜産的利用は残っていませんが、山菜採り・観光・各種アクティビティなどの新しい草原の利用形態が定着し、地域の雇用や振興にも貢献している点が優れています。今後は、外部からの支援強化も視野に入れながら、今日まで守られてきた草原環境の価値と維持管理を継承して欲しいと願っています。

野焼きによる草原の存続への危機感は住民、行政ともに抱いており、草原の価値や文化を内外で共有・継承していく必要があることが認識されているようです。今回「草原の里100 選」に選定されたことを起爆剤にしていただければ幸いです。まだ認識されていない草原環境の多様な価値を掘り起こし、それらを紡いで「里の仕組み」を創造して行くべき草原として、今後の展開を見守り、応援して行きたいと思います。

草原の情報

草原の里 御船町
所在地 熊本県 御船町
所有者 御船町
管理者 御船町(所有者)
面 積 20ha

書籍のご紹介

より詳しい情報は、書籍『未来に残したい日本の草原(未来に残したい草原の里100選運営委員会 編)』をご覧下さい。

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メディア掲載

「草原の里100選」に熊本県内7地域 阿蘇市や産山村など全国最多|熊本日日新聞社