日光市霧降高原キスゲ平園地

霧降る高原、華やぐ天空の回廊

満開のニッコウキスゲと天空回廊

草原の概要

キスゲ平は日光連山の東端赤薙山の中腹、標高1,300m~1,600mにかけて広がる半自然草原である。毎年定期的に人の手によって草刈りを行い、草原状態を維持している。明るく開けた環境は草原性動植物の宝庫となり、春から秋にかけて100種類を超すたくさんの花々や、草原を好む昆虫や鳥類などを多数観察することができる。生育する植物の中でも、6月中旬から7月中旬にかけて咲くニッコウキスゲの大群落が一番の特徴で、満開時は草原が黄色く染まり、それらを鑑賞しに多くの人が訪れる。

キスゲ平には1,445段の階段(天空回廊)と遊歩道が整備されており、四季折々の花や景色を眺めながらゆっくりと散策することができる。眼下には関東平野が広がり、天気の良い日は遠くの富士山や東京スカイツリーをも望むことができる。また、キスゲ平は雲海の発生しやすい地形となっており、条件さえ揃えば雲海と満開の花を同時に楽しむこともできる。

現在では年間約12万人が訪れる日光市の観光スポットである。

カリヤスモドキの草紅葉

今後の展望

キスゲ平が自然公園として開園してから10年が経過し、その管理手法は確立されてきた。しかしながら、同時に課題も多く見えてきており、先を見据えての管理が必要になると強く感じている。

目下、一番の課題は公園設備の老朽化である。1994年に設置したシカ侵入防止柵は多くの範囲で老朽化が進んでおり、軽微な補修を繰り返しながら使用している。設置当時はシカの生息密度が低下し、植生への影響が軽微になるまでの緊急的・一時的なものとして位置づけられていた。しかしながら、シカの生息数は目標とする密度には至っておらず、柵の設置は恒久化の様相である。短期計画と長期計画をしっかりと立て、将来を見越した管理が必要である。

また、キスゲ平は日光市の観光施設としての側面を持ち、利用者数を増やしていくことも重要な課題である。誰でも参加できる花の観察会、昆虫観察会、バードウォッチングなどの体験型イベントを開催し、地域住民や観光客に交流の場を提供すること、キスゲ平を健康増進の場と捉え、心身ともにリフレッシュしてもらうなど、観光客と地域住民、そのどちらもが気軽に利用できる場所を目指していきたい。

さらにニッコウキスゲだけでなく、その他の資源も有効に活用していく。キスゲ平にはまだ知られていない魅力が多数存在する。一例として、早春に咲くカタクリの大群落が挙げられる。通常、落葉広葉樹の林床のような半日陰を好むカタクリが、高密度で明るい草原一面に咲く。開けた斜面に咲くことで観察しやすいと来園者に喜ばれているが、その認知度はまだまだ低い。

この他にも、夏に草原をピンクに染めるシモツケソウの群落、秋の草紅葉で色づくカリヤスモドキ、雲海や霧氷など自然が作り出す絶景、夜景と星空が同時に楽しめるロケーションなど挙げればきりがない。これらのことを伝えていくことが今後の大きな課題であり、広く情報を発信していきたい。

最後に、ニッコウキスゲは日光市の花に選定されており、日光の名を冠するなど、日光市民にとって所縁のある象徴的な花である。全国的にもニッコウキスゲの群落は減少しており、そのほとんどがシカの食害によるもので、ニッコウキスゲの残された半自然草原の希少性は一層増してきた。この環境が後世に残るように多くの人の理解を得ながら、継続的に環境保全に取り組んでいきたい。

シカ侵入防止柵の管理

応募した理由

日光市霧降高原キスゲ平園地(以下「キスゲ平」)は閉鎖したスキー場跡地を日光市が再利用するために再整備した自然公園である。ニッコウキスゲの群落地として知られており、2022年で開園10年を迎えた。

かつては人の生活と密接に結びついていた半自然草原も茅葺屋根の減少や、採草地の減少とともに、全国的にほとんど見られなくなってしまった。利用の形態は異なるが、かつての自然と同じような半自然草原が残されていることは大変貴重である。

この草原と日光市のシンボルでもあるニッコウキスゲが後世に残るよう、この自然環境を維持管理していくことは重要であり、多くの人に広く草原環境を知ってもらいたいとの思いがある。管理者はキスゲ平の自然環境の保全を第一に考え、市民の憩いの場・環境学習の場を提供するとともに、日光市観光の中心的施設としての役割を果たすことを目標にしている。

今回、草原の里100選に選定されたことで、市民・観光客・関係者等、さらに多くの人々にキスゲ平の魅力が拡がることを願っている。

(応募者:一般財団法人 自然公園財団)

スノーシュー体験

選考委員のコメント

町田 怜子
町田 怜子

ニッコウキスゲの大群落として貴重な草原であり、国立公園における観光面からみた草原管理についてもモデル地域になると思いました。

高橋 佳孝
高橋 佳孝

もともとの半自然草原の利用形態がスキー場から公園園地へと変遷しながらも、ニッコウキスゲの大群落が維持され、体験メニューや交流事業、環境教育に活用されている点が評価できます。現在の植栽主体によるニッコウキスゲの維持から、草刈りなどの伝統的管理による維持にシフトしていく方向性で将来ビジョンを描いていかれることを期待します。シカ対策は他の草原でも問題になっており、また、これから直面する草原も増えてくると予想されますので、当地での取り組みを情報発信していただけると参考になります。

草原の情報

草原の里 キスゲ平
所在地 栃木県 日光市
所有者 日光市
管理者 所有者以外の団体
面 積 13 ha
指定等 国立公園、かおり風景100選

書籍のご紹介

より詳しい情報は、書籍『未来に残したい日本の草原(未来に残したい草原の里100選運営委員会 編)』をご覧下さい。

Amazon.co.jp